Terumi Morita
Recommended · 料理科学

推測ではなく、観察として料理するための五つの道具。

温度計、計り、発酵瓶、pH 試験紙、マイクロプレーン――科学的に 料理を捉える家庭料理人が繰り返し戻ってくる小さな道具箱。一品 ずつ、それが台所のどの変数を変えるかを書きました。

01 · ThermoPro / タニタ

デジタル温度計(瞬時計測)

熱を使う台所で、いちばん役に立つ一品です。差し込んで二秒、中心温度が出る。鶏むね肉は七十五度、カスタードは八十二度。その差が「安全」と「分離」の境界線です。経験や勘では、棒の正確さに勝てません。

家庭料理の現場で見ていると、同じレシピを同じ週に作っても、火入れの温度は五〜十度ぶれます。温度計はその「ぶれ」を一度の出費で消してくれます。火加減を「感覚」から「書ける数字」に変える――数字にできれば、再現できます。

関連する原理: 原理 1:火加減は火力だけではない。
02 · OXO / タニタ

デジタルキッチンスケール(0.1g 精度)

焼き菓子の失敗の多くは、計量の失敗です。同じ「カップ一杯の小麦粉」が、すくい方や湿度や銘柄によって 120g 〜 160g まで揺れます。重さで書かれたレシピは台所をまたいで生き残り、容量で書かれたレシピはなかなか生き残りません。

計りはまた、「比率」の言葉を使えるようにしてくれます。タルト生地は 1:2:3、パン生地は加水 65%、発酵漬けは塩 2%。カップではなく比率で料理し始めると、レシピが「暗記するもの」ではなく「読むもの」に変わります。

関連する原理: 原理 11:道具は再現性をつくる。
03 · WECK / セラーメイト

ガラス瓶(広口・1L)

発酵に向く瓶です。ガラスの蓋とゴムパッキンで、塩水の色、食材の質感、小さな泡の動きをそのまま観察できます。アメリカは WECK、日本はセラーメイト――同じ発想が、二つの文化を経由した結果です。

一リットルは「最初の発酵」にちょうどいいサイズです。失敗しても安く、うまくいけば実用になる、ちょうどそのあいだ。台所のカウンターに瓶が一つあると、不思議と、ほかの工程もついてきます。

関連する原理: 原理 10:発酵は時間を制御する技術である。
関連書籍: 時間を食べる
04 · Hydrion / ADVANTEC

pH 試験紙

発酵が「できあがった気がする」段階で、感覚では捉えにくいことを教えてくれるのが pH 試験紙です。多くの食品安全ガイドラインでは、家庭での発酵の文脈において、塩水の pH がおおむね 4.6 を下回る状態を「十分に酸性」として扱います。それより上は、同じガイドラインの上では、まだ「発酵中」として扱われます。数百円のひと巻きで、家庭発酵の最初の一年に必ず出てくる「これでいいのかな」の不安が一段落します(具体的な安全基準は素材と方法によって変わるので、迷ったときはその発酵に詳しい信頼できる資料を参照してください)。

pH をどれくらい厳密に測るべきか、諸説あります。私の見方では、厳密さは要りませんが、ひと瓶につき一度は測ったほうがいい。感覚では捉えられないことを、数字が代わりに教えてくれます。

関連する原理: 原理 10:発酵は時間を制御する技術である。
関連書籍: 時間を食べる
05 · Microplane

Microplane プレミアム クラシックゼスター(46020)

柑橘の皮、生姜、にんにく、わさび、ハードチーズ――「ごく小さい風味を、大きな表面積で取り出したい」ときの定番です。二十年、業務用厨房で選ばれ続けているのには理由があります。46020 番のファインゼスターは、家庭でも仕事場でも、いちばん使う一本です。

香りの分子は、柑橘の外皮の薄い層と、生姜の細胞壁のあいだに住んでいます。マイクロプレーンは、その細胞を包丁や箱型おろし金よりきれいに切るので、一グラムあたりの香りが立ちます。十秒の手間で、「レモン風味」と「向こうのテーブルからレモンの香りが届く」の差になります。

関連する原理: 原理 5:油は香りを運ぶ。

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